梅毒は梅毒トレポネーマ・パリダム(TP)と呼ばれる病原菌体が原因となって起こる病気で、性病の一つに数えられています。主に性交渉によって感染し、オーラルセックスだけでなくフェラチオやクンニリングスでも感染するのが特徴です。また性器への直接の接触だけでなく、キスを行った場合でも梅毒に感染する恐れがあります。また非常に稀ではあるものの、輸血や食器、衣類にカミソリなども原因となることが報告されています。
疑いがあるときは早期に受診を
梅毒に感染したかもしれないと感じたら、早急に検査を受けることが大切です。梅毒は性病検査を行っているところであれば検査が受けられますし、人に知られるのがイヤな場合は匿名や自宅で検査をすることもできます。自宅で検査をする場合は、梅毒に感染しているかどうかを調べることができる検査キットを使用します。
匿名で検査が受けられるのが保健所で、しかも検査料は無料となっています。しかし平日にしか実施していないことや定員があるため希望日は定員オーバーで検査が受けられないことがネックです。早めに検査を受けたくても、保健所には待ち時間が必要であることを覚えておくと良いでしょう。最も検査の精度が高く、梅毒に感染していることが分かったときにすぐに治療にかかれるのはクリニックなどの医療機関です。医療機関での検査では梅毒に陽性反応が出た場合、他の性病に対する検査も並行して受けることができます。中には梅毒だけでないこともありますので、やはり万全を期するなら医療機関で検査を受けることをおすすめします。
他の病気に似ている梅毒
梅毒に感染すると、およそ3週間後に性器や口の周りに小豆粒ほどの大きさのしこりができてきます。主に外陰部に直径1cmほどの赤くて硬いしこりができるのが特徴で、亀頭や冠状溝、大小陰唇にも見られ、この痛みがない状態を初期硬結と言います。次の硬性下疳の状態に入ると、痛みは伴わないものの初期硬結でできたしこりが潰れて硬い潰瘍と化します。触ったときに軟骨程度の硬さになっているのがこの時期の特徴です。6週間ほど経つと太ももの付け根(両側鼠径部)のリンパ節が硬くなり、腫れて膨張してきます。しかしどちらも無痛であるため放置していても3週間ほどで症状が消えてしまいます。そのせいで完治したと考えてしまう人が多いのですが、これが梅毒の第1期症状であり放置すると第2期の梅毒疹が現れます。
次第に進行していく梅毒の恐怖
感染して9週間を過ぎるとその後3ヶ月の間に、体内に様々な変化が現れてきます。まずえんどう豆くらいの大きさの紅斑が体中に多数発生しますが、痛みやかゆみがないことと、こちらも自然的に消えていくという特徴があります。しかし12週間後には黒味がかった赤い梅毒性丘疹が顔や体、四肢に多数発生し、両手足の裏にも確認することができます。続いて口唇や頬粘膜、口蓋にも口内炎に似たものができ、歯科医師でも判断が難しいため梅毒と気付かないことがよくあります。また喉にも感染する梅毒は扁桃炎に非常に症状が似ているため、風邪だと思う人も多くいます。しかし梅毒の場合は口内炎では見られない中央部分のびらん化や扁桃の肥大化による声がかすれてくるなどの症状が現れます。しかしながらここでも特に治療を受けなくても、症状が引いていくのが梅毒の恐ろしいところです。
晩期に進んだ梅毒の症状
梅毒に感染して3年から10年経過すると、皮膚や骨、筋肉にゴム腫と呼ばれるしこりや腫れが現れ、傷痕になって残ることもあります。またこのゴム腫は肝臓や腎臓にもできることがあり、治療をしないまま10年が過ぎると心臓や血管、中枢神経系が侵されてしまいます。その結果大動脈瘤や進行麻痺、認知症の症状が現れ、日常生活のあらゆる場面で不都合が生じるようになります。そして失明することやいずれは死に至ることもある大変恐ろしい病気なのです。梅毒は放置しておいても決して自然治癒することはありません。しかし早期にペニシリン系の抗生剤を服用する治療を開始すれば、数週間から2ヶ月程で完治させることができます。
感染していた期間が長ければ長いほど、治療にかかる日数も同様に長くなっていくのです。
梅毒に感染しないためには、不特定多数との性交渉を避けることが非常に重要です。また特定のパートナーがいる場合でも、どちらかに梅毒の症状が見られたら二人一緒に検査を受けることも必要になります。一方だけが治療をしても、もう一方が感染したら再び感染を起こす危険性があるからです。性交後に身体のどこかに異常を発見したら、そのうち治るだろうと思わずに早期に検査を受けるようにしましょう。