B型肝炎はB型肝炎ウィルス(HBV)が肝臓に感染して起こる肝炎です。症状が緩慢で感染に気付きにくいことも多く、比較的軽くて自然治癒する方もあれば、症状が悪化して慢性肝炎から肝硬変、さらには肝細胞癌へと進展するリスクもあります。B型肝炎といえば、国に対して損害賠償を求めた集団訴訟で病名が一気に知名度を挙げた経緯があります。幼少期に受けた集団予防接種において注射器の連続使用が行われた結果、B型肝炎ウィルスに感染した子どもたちとその保護者などが起こした訴訟であり、一定の条件に当てはまる方は給付金が支給されることとなりました。もっとも、B型肝炎の感染ルートは集団予防接種に限らず、性感染した女性からの母子感染などもあり、性交渉においては気を付けなくてはなりません。
気になる主な症状
急性B型肝炎の場合、ウィルス感染後にすぐに重篤化するのではなく、徐々に緩慢に発症するのが一般的です。微熱や食欲不振、全身の倦怠感が現れ、悪心や嘔吐を起こす方もいます。肝臓といっても身体のどのあたりかわからない方も多いと思いますが、右季肋部痛や上腹部の膨満感などの症状が見られることもあります。肝臓は胃腸や心臓などと異なり場所がわかりにくく、ものいわぬ臓器などといわれることもあります。その中でも肝臓特有の症状であるのが、黄疸です。
顔をはじめ肌の色が黄色っぽくなる症状ですが、黄疸が出現するのは大人の場合で30~50%と全員に起こるものではありません。この点、重症に陥るケースを除き、こうした症状は1ヶ月程度で自然治癒するのが一般的です。感染者の免疫能が正常に働いていれば、HBVは身体から自然と排除され、キャリア化することもありません。ですが、免疫能が不十分な乳幼児や不規則な生活などで免疫能が低下している方や免疫抑制剤の投与を受けている場合などに感染においては症状が深刻化したり、キャリア化したりするので注意が必要です。
感染ルート
感染はB型肝炎ウィルスの含まれる血液や体液が身体の中に入り込むことで起こります。もっとも、日本国内で輸血される血液はすべてB型肝炎ウィルスの検査が行われているので、基本的には輸血による感染のリスクは極めて低くなっています。かつては感染した母親からの母子感染も多かったのですが、1986年から母子感染防止事業の取り組みでかなり減ってきました。また、過去には保育園の園児や保育園での集団感染が起きたこともあります。大人における感染ルートは、B型肝炎ウィルスに感染した人との性交渉が圧倒的に多くなっています。また、感染したことに気付かないまま、違う人と性交渉をして感染させたり、気付かぬまま妊娠して胎児に感染させたりしてしまうリスクがあるので気を付けなくてはなりません。現在は年間で約10,000人の新規感染者がおり、年齢別に見ると14歳以下の小児や70歳以上の高年齢層の感染報告はあまり多くありません。つまり、大人の性感染が多いと考えられ、性感染対策の強化が求められています。
主な治療法
B型肝炎感染の主な治療法としては、まず、2000年に核酸アナログ製剤が導入されました。現在では核酸アナログ製剤とインターフェロン(IFN)製剤を用いることで、B型肝炎ウィルスの増殖を抑え、重篤な肝疾患への進展を防げることが可能となっています。もっとも、欧米に多い遺伝子型Ae株のウィルスに感染してしまうと免疫・化学療法を行うと、かえってB型肝炎が再活性化するという問題が生じています。急性B型肝炎は基本的には自然治癒する傾向が強い病気ですが、重篤化や劇症化へ移行するかどうかは極期を過ぎたか否かを見極めることがポイントです。凝固系検査の継続や腹部超音波、CT検査を通じて状態を把握し、劇症化しないよう検査通院するのがおすすめです。
劇症化しなければひどくなることはありません。劇症化した場合には血漿交換や人工肝補助療法、さらには生体肝移植などの治療が必要になることもあります。B型肝炎の感染を予防するには安易な性交渉を避け、ウィルス保持者との接触を避けるのが一番です。また、医療関係者など思わぬ感染リスクがある方などの場合、ワクチン接種が有効です。B型肝炎ワクチンの予防接種は4~6ヶ月間に3回受けることで、B型肝炎の感染や将来の肝がんの予防が期待できます。乳幼児期に3回の予防接種を行うと、ほぼすべての型がB型肝炎に対する免疫を獲得することができるとされています。そのため、万が一、ご自身の感染に気付かず子どもが生まれた場合には、将来の発症を防ぐためにも、お子さんへの早い段階でワクチン接種を検討しましょう。獲得した免疫は少なくとも15年間持続できます。母子感染がない方も20代までに接種を行うと、高い抗体効果が期待できます。一方、B型肝炎ワクチンの効果は年齢とともに低下していくため、たとえば、40歳を過ぎてからでは免疫を獲得できる割合は8割へと低下するので注意が必要です。
B型肝炎は現在では性感染の事例が増えており、安易な性交渉を行わないよう努めることが望まれます。万が一、症状が現れた場合は定期検査によって重症化を防ぎましょう。